つぼん汁は、熊本県人吉球磨地域の郷土料理で、お祝い事や祭りで振る舞われる伝統的な汁物です。地鶏の出汁をベースに野菜や豆腐、こんにゃくを加え、具材は7種または9種の奇数に揃えるのが特徴。家庭や地域ごとに異なる味が楽しめます。名前の由来は、汁物を入れた深いお椀「つぼ」から来ています。

うったち汁は佐賀県塩田地区に伝わる郷土料理で、「旅立ち」を意味する方言が名前の由来です。平安時代、女流歌人・和泉式部が都へ向かう際、養い親がふるまった伝説が残ります。本来は鯨の脂身を使用しますが、近年は豚肉で代用することも。里芋やごぼうなどの野菜と団子状の生地を煮込んだ、心温まる一品です。

黄飯（おうはん）は、大分県臼杵市の伝統料理で、くちなしの実を使って黄色く炊き上げたご飯です。その起源は、キリシタン大名・大友宗麟が宣教師から伝えられた料理や、藩主の快気祝い、参勤交代のもてなし料理など諸説あります。「かやく」と呼ばれる魚のすり身や野菜の煮物をかけて食べるのが特徴で、鮮やかな色合いと栄養バランスの良さが魅力です。

がめ煮（筑前煮）は、福岡県の郷土料理で、鶏肉や根菜類を煮込んだ料理です。れんこん、ごぼう、にんじん、さといもなどの食材を使用し、しょうゆ、砂糖、だしで味付けします。正月やお祝い事、日常の食卓にも登場し、地域や家庭によって材料や調理法が異なります。

鯛めしは愛媛県の郷土料理で、新鮮な真鯛を使った炊き込みご飯です。真鯛を丸ごと炊飯器で炊く方法や、刺身を特製だしとともにご飯にのせる漁師風のスタイルがあります。瀬戸内海の豊かな自然で育った鯛のうまみが特徴で、祝いの席にふさわしい料理として古くから親しまれています。春の「桜鯛」が特におすすめです。

カツオの角煮は、高知県の郷土料理で、カツオを甘辛い味付けで煮込んだ保存食です。刺身などの余りを再利用する工夫から生まれ、ショウガや醤油、砂糖などで煮込むことで濃厚な味わいが楽しめます。そのまま食べるだけでなく、ほぐしてご飯に混ぜた「カツオ飯」やおにぎりの具材としても活用され、栄養豊富で親しまれています。

そば米雑炊は、徳島県祖谷地方発祥の郷土料理で、そばの実を塩茹でし殻を取り除いた「そば米」を使用します。稲作が難しい山間地で、平家の落人がそばを栽培し主食として活用したのが始まりとされます。野菜や山鳥を加えた煮込み料理として親しまれ、現在では徳島を代表する伝統的な一品として広く知られています。

あんもち雑煮は、香川県の郷土料理で、白みそ仕立ての汁に甘いあんこ入りの丸もちを入れた珍しいお雑煮です。具材には大根や金時にんじんなどが使われ、丸い形は家族の円満を象徴します。砂糖が貴重だった時代の贅沢なごちそうとして伝えられ、現在でも香川県の冬の味覚として親しまれています。

鯨の南蛮煮は山口県の郷土料理で、鯨肉とごぼう、にんじん、こんにゃくなどの野菜を米味噌と砂糖で煮込んだ一品です。鯨漁が盛んだった江戸時代から続く料理で、鯨の赤身だけでなく皮や内臓まで活用する独自の食文化が反映されています。風味豊かな味わいと栄養価の高さが特徴で、行事食やお祭りで親しまれています。

広島のお好み焼きは、生地、具材、麺を重ねて焼き上げる独特なスタイルが特徴です。小麦粉の生地にキャベツ、もやし、豚肉、中華そばなどを順番に重ね、蒸し焼きにすることで野菜の甘みが引き立ちます。仕上げには広島特有のお好みソース、青のり、かつお節をかけて完成。栄養バランスが良く、地元の味として観光客にも愛されています。

しじみ汁は、滋味豊かな味わいと栄養価の高さが特徴の伝統的な汁物です。特に島根県宍道湖産の大和しじみを使ったものが有名で、オルニチンやミネラルを豊富に含み、肝機能のサポートや疲労回復に効果的です。冬は味噌仕立てで濃厚に、夏はすまし汁でさっぱりと味わうのが一般的で、朝食にもよく食べられています。

岡山の郷土料理「ばら寿司」は、寿司飯に新鮮な魚介類や野菜を混ぜたり盛り付けたりした彩り豊かな一品です。その起源は江戸時代、倹約令を受けた庶民が工夫して生み出した料理にあります。エビやアナゴ、レンコン、錦糸卵などを使い、見た目も味も華やかで、祭りや祝い事の場で親しまれています。

いぎすの白和えは、鳥取県中部の郷土料理で、乾燥した海藻「いぎす草」を戻して煮込み、豆腐や野菜と和えた料理です。味噌やごま、砂糖で味付けし、さっぱりとした風味が特徴。冠婚葬祭などで食べられる、地域の伝統を感じる一品です。

ぼたん鍋は、兵庫県篠山市の郷土料理で、猪肉を味噌仕立てで煮込んだ鍋料理です。名前は、猪肉を並べると花のように見えることに由来します。大根やにんじんなどの野菜と共に煮込み、滋養強壮に優れ、特に冬の寒い時期に人気の料理です。

とふの粉は、高野豆腐を製造する際に出る細かい切りくずで、栄養価は高野豆腐と同じく良質なたんぱく質やカルシウム、鉄分が豊富です。古くから無駄なく活用され、野菜と煮込んで煮物などに仕立てられてきました。細かい粒状でだしや調味料とよく絡むため、学校給食や家庭料理で親しまれる郷土食材です。

阿騎野の葛もちは、奈良県大宇陀地域の特産品で、高品質な吉野葛を使用した伝統的な和菓子です。寒晒し製法で作られた葛粉は、透明感と滑らかな舌触りが特徴。寒天や水と練り合わせて冷やし固めた葛もちは、きな粉をまぶして仕上げます。夏の涼菓として親しまれ、滋養豊かな食品としても評価されています。

じゃここうこは、大阪府泉州地域で古くから親しまれている郷土料理です。特産の「水なす」の古漬けと、大阪湾で獲れる「えびじゃこ」を濃口醤油で煮込んだ保存食で、昔は家庭ごとに濃い味付けで作られていました。食材を無駄にせず工夫した料理で、現在では泉州の特産を活かした伝統的な一品として楽しまれています。

にしんなすは、京都の伝統料理で、保存食として親しまれてきた身欠きニシンと旬のナスを甘辛く炊き合わせた一品です。脂の乗ったニシンの煮汁でナスを煮込むことで、双方の旨味が引き立つ絶妙な味わいを生み出します。食材を無駄にせず活用する京都人の知恵が詰まった料理で、夏バテ予防にも効果的とされています。

伊勢うどんは三重県伊勢地方の郷土料理で、柔らかい太麺に濃厚な醤油だれを絡めたシンプルな一品です。江戸時代、参宮街道沿いの参拝客向けに素早く提供できる食事として生まれました。たまり醤油やだしを使ったタレは見た目以上にまろやかで風味豊か。地元で愛され続けるこの料理は、伊勢神宮観光の定番グルメでもあります。

アメノイオ御飯は、滋賀県の琵琶湖に生息する固有種「ビワマス」を使った郷土料理です。「アメノイオ」とは、産卵期に川を遡るビワマスを指し、調味料で煮た魚と野菜を米とともに炊き込んだ一品です。地域ごとに炊き方や名称が異なり、秋を代表する料理として親しまれています。平成10年には「滋賀の食文化財」に指定されました。