先カンブリア時代についてできるだけ簡単に紹介

先カンブリア時代とは、地球が形成されてから約46億年前以降の期間で、肉眼で見える硬い殻を持った生物の化石が初めて見つかる5億4,100万年前以前の約40億年間の地質時代です。

この時代は冥王代、太古代、原生代の三つに分けられ、生物の進化史に基づいています。

古生代最初のカンブリア紀に先行する期間は、かつて一括して先カンブリア紀と呼ばれていましたが、後の研究により累代と代が設定され、その用語は使われなくなりました。

先カンブリア代は、化石が見つかる前の時代を指し、現在の顕生代(古生代、中生代、新生代)に対して隠生代とも呼ばれています。

先カンブリア時代については、最近数十年で解明が進み、詳細な情報が得られつつありますが、依然として多くの謎が残っています。

先カンブリア時代年表一覧

先カンブリア時代は、地球が形成されてから約46億年前に始まり、カンブリア紀が始まる5.41億年前まで続いた期間です。

この時代には、地球史の大部分を占めるとされ、以下のような重要な出来事が起こりました。

約46億年前: 地球の形成。軌道を周回していたミニ惑星が合体し、地球が形成される。

約44億400万年前: 最古の岩石が地球上で見つかる。

約40億年前: 地球のほぼ全体が海で覆われる。

約40億年前から38億年前: 隕石の衝突が再び増加し、隕石重爆撃期と呼ばれるようになる。

この時期の地球は、岩石が溶けたマグマの海に覆われ、大気中には水蒸気と雲が存在していました。

隕石の衝突が地球の進化に与えた影響や、海洋の形成についての研究が進められていますが、隕石がなぜこの時期に増加したのかについては、まだ完全に解明されていません。

先カンブリア時代の生物群について紹介

生命の起源には様々な説がありますが、グリーンランドのイスア地域で38億年前の岩石中に生命由来と見られる炭素の層が発見されています。

また、南アフリカのオルフェルワクト層のチャートから35億年前の細菌の化石が見つかっています。

西オーストラリアのビルバラ地域では、保存状態の良い34億6,000万年前の原核生物の化石がワラウーナチャートとエイベックスチャートから発見されており、同時期の地層からはメタン生成の証拠も見つかっています。

これにより、この時期には生物の多様化が進んでいた可能性が示唆されています。

生命の発生時期については、早ければ43億年前とする研究もあり、先カンブリア時代を通じて原始的な生命体が存在していた証拠が見つかっています。

約27億年前には藍色細菌が出現し、光合成によって酸素を放出し始めました。この酸素は後に他の生命体の重要なエネルギー源となりました。

系統解析により、太古代の終わりには細菌と古細菌の多くの門が出現したと推定されています。

約22億年前には大酸化イベントが起こり、酸素を必要としない嫌気性細菌と酸素を利用する好気性細菌が交替したと考えられています。

これが地球生命史における最初の大絶滅と棲み分けとされています。

約19億年前にはカナダのスペリオル湖付近のガンフリント層から多くの微化石が発見されました。これらは球状や繊維状の細菌類です。

真核生物の出現は不確かですが、約21億年前までには最初の真核生物が現れたとされています。

しかし、初期の真核生物の多くは現存しておらず、多様化が進んだのは約11億年前とする説もあります。

複雑な多細胞生物の最古の証拠は約6億年前のものです。この時期の地層からは、エディアカラ生物群と呼ばれる無脊椎動物の痕跡が見つかっています。

先カンブリア時代末期の約5億4,400万年前には「有殻微小動物群」と呼ばれる生物が出現しましたが、その詳細はほとんど分かっていません。

これらの生物群はカンブリア紀の初期に消滅し、代わりに多様なバージェス動物群が現れ、カンブリア爆発と呼ばれる現象が起こりました。

1950年代から1980年代にかけて、ソ連や北米の古生物学者たちはカンブリア系基底の堆積物の下からトモティアン動物相を発見しました。

これらの生物は小さな骨格を持ち、管状や円錐形の殻から成っています。これらはエディアカラ動物相と系統的関係がないものの、カンブリア系の多くの生物の先祖であると考えられています。

先カンブリア時代のプレートテクトニクスの詳細は不明確ですが、当初は海が広がり陸地はほとんど無かったと考えられています。

プレートが沈み込む場所で造山運動が始まり、小さな島や弧状列島が形成され、それらが合体して大陸が成長していきました。

約27億年前にはマントルの対流が変化し、大陸が形成され始めました。

約19億年前には初の超大陸ヌーナが形成されました。

この時期には大陸の急成長が起きました。その後の大陸移動については諸説あり、10億年前に超大陸ロディニアが形成され、6億年前に分裂したという説や、10億年前に超大陸パノティアが形成されたという説もあります。

約7億年前から5億年前には3度目の大陸急成長期がありました。

先カンブリア時代の特徴

地球が形成された約46億年前から、初期の大気についての詳細はほとんどわかっていません。

約35億年前に酸素の存在が確認されましたが、その濃度は非常に少なかったとされています。

初期の大気は、水蒸気が約300気圧、二酸化炭素や一酸化炭素が50気圧から100気圧、窒素が約1気圧と推定されています。

この大気はしばらくすると水蒸気が凝縮して海が形成され、二酸化炭素が主要成分となりました。

初期の太陽の光度は現在の約70%程度でしたが、大気中の大量の二酸化炭素により、地表の気温はかなり高かったと考えられています。

実際に、地表の気温が60℃を超えていた痕跡が残っています。二酸化炭素は海に吸収されたり、炭酸カルシウムとして沈殿したりして、徐々に減少していきました。

27億年前には、シアノバクテリアによる光合成が始まり、酸素が大量に生成されるようになりました。

この酸素は主に海水中の鉄イオンと反応し、大量の酸化鉄を沈殿させました。今日では鉄鉱石やマンガンなどとして採掘される多くの鉱物の大部分は、この酸化物が地上に隆起したものです。

古い岩石には、この時期に形成された縞状鉄鉱層の証拠が大量に含まれています。海水中のイオンがほぼ全て沈殿すると、酸素は大気中に放出され、そこに蓄積されました。こうして、現在のように大気の主要成分の1つとなっていったのです。

約25億年前、縞状鉄鉱層が大量に形成されました。海水中の鉄イオンが酸素と結びつき、酸化鉄が大量に沈殿したためです。

これにより、海中に大量の酸素が溶け込むようになりました。縞状鉄鉱層は赤褐色で、鉄錆の色をしていますが、その成因については詳細が不明です。季節変化説も提唱されています。

こうした環境変化の中で、生物は酸素をエネルギー源として活用する能力を進化させました。

これが酸素呼吸の始まりであり、嫌気呼吸よりもエネルギー効率が高いことが特徴でした。こうした進化が可能にしたことで、生物の多様化が加速していったのです。

先カンブリア時代のエディアカラ生物群について紹介

先カンブリア時代の終わり頃には、さまざまな生物が出現しました。その中で、約6億年前に見られるのがエディアカラ生物群です。これらは殻や骨格を持たず、軟体部だけの生物でした。

エディアカラ生物群は、オーストラリアのアデレード北方にあるエディアカラ丘陵で大量に発見された生物の化石群を指します。

1946年にオーストラリアの地質学者レッグ・スプリッグによって発見されました。

これらは肉眼で確認できる最古の生物化石で、先カンブリア時代の生物相を示す数少ない証拠の一つです。これらの生物は、海藻やクラゲに似たものが多かったと考えられています。

エディアカラ生物群は、約6億から5億5千万年前の化石として推定されています。

同様の化石はカナダのニューファンドランド島やロシアの白海沿岸でも発見されています。多くの化石は殻や骨格を持たず、柔組織だけで構成されています。

通常、軟体部だけの生物が化石として保存されることは稀ですが、エディアカラ生物群ではそのような生物が多数見られます。

これは泥流などにより海底にいた生物が一瞬で土砂に封じ込められたためと考えられています。また、微生物の集合体の上を大きな生物が移動した痕跡も確認されています。

エディアカラ生物群には、クラゲ状のネミアナや楕円形のディッキンソニアなど、多種多様な軟体性生物が含まれています。

これらは地球最古の多細胞生物とされています。エディアカラ生物群の特徴は、これらがかなり大きいことで、カンブリア紀の化石群と比べて全体的に大きく、非常に薄い体を持っていたと考えられています。

スプリッグの発見は、その地域にアデレード累層群という地層があり、1922年にはアデレード大学のエッジウォース・デービッドとティラードが同様の化石を発見していましたが、それらはカンブリア紀のものとされていました。

1946年、スプリッグはアデレードの北約300キロメートルのエディアカラ丘陵で化石を発見し、それが先カンブリア時代後期のものであると確信しました。

当初、彼の発見は理解されませんでしたが、後に認められ、化石産出地は保護区に指定されました。1959年にはこれを先カンブリア時代のものとする論文が国際誌に掲載され、広く注目されるようになりました。

同時期の類似の化石は世界中で発見されるようになり、現在では20カ所以上が知られています。

これらの生物の分類については不明な点が多く、最古の多細胞動物とされています。発見者のスプリッグを含む研究者たちはこれらを現代の動物群の祖先と見なしていましたが、一方で進化の過程で途絶えた側枝とする見方もあります。

2000年代後半には、エディアカラ生物群に属するいくつかの生物が、カンブリア紀に出現した動物群の祖先であるとされるようになってきました。

エディアカラ生物群は地球全体が氷に覆われた時期(スノーボールアース)の直後に出現し、大部分がカンブリア紀の始まり前に絶滅しました。

カンブリア爆発の際には、堅い外骨格を持つ動物が多く見られるようになり、エディアカラ生物群は新たな捕食動物に捕食されて絶滅したと考えられています。また、環境の激変も絶滅の要因とされています。

まとめ

先カンブリア時代(おおよそ約6億年前から5億4千万年前)は地球史上重要な時期であり、以下のような特徴があります。

地球の環境の変化

先カンブリア時代は、地球の環境が急激に変化する時期でした。この時代の初期には、地球は完全に氷に覆われる「スノーボールアース」と呼ばれる寒冷期がありましたが、後半には気温が上昇し、氷が溶け出しました。

生命の進化

先カンブリア時代は、地球上で最初の多細胞生物が現れた時期でもあります。エディアカラ生物群などの多細胞生物が出現し、それまでの原始的な生物から進化してきました。

化石の発見

エディアカラ生物群など、先カンブリア時代の化石がいくつか発見されており、これらは地球史上初めての多細胞生物の痕跡として重要です。これらの化石は、地層から発見され、その形態から当時の環境や生態系について推測する手がかりとなっています。

地球科学の発展

先カンブリア時代の地層は、地球の地質学的変遷や大気の成分など、地球科学の研究にとって貴重な情報源です。これらの時代からの化石や岩石の分析により、地球の進化とその過程が理解されつつあります。

カンブリア爆発

先カンブリア時代の終わりには、有名な「カンブリア爆発」が起きました。この時期に急激に多様な生物が現れ、多くの動物の祖先が登場しました。これが、多細胞生物の進化と多様化の大きな転換点とされています。

先カンブリア時代は、地球上の生命が大きな進展を遂げ、地球環境も大きく変化した時期であり、生物進化と地球科学の発展にとって重要な時代です。

最新情報をチェックしよう!