白亜紀について紹介

歴史
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中生代の最後の地質時代である「白亜紀」は、約1億4,500万年前から6,600万年前に及ぶ期間を指します。この時代は、前期と後期の2つに分けられます。

「白亜」という名称は、石灰岩を含む地層が基となり名付けられたものです。「亜」という文字は、元々「堊(アク)」を表す同音異字として使われています。

特徴 この時代は、温暖な気候と高い海水面が顕著で、地質時代としての特性が明確に現れています。ただし、開始や終了の正確な時期には数百万年単位での誤差が存在します。

特に、この時代の終わりを象徴する「K-Pg境界」には、イリジウムを多く含む粘土層が世界各地で確認されています。

この粘土層は、現在のメキシコ周辺に存在する巨大なクレーターを作り出した隕石の衝突により発生した破片が堆積したものと考えられています。この隕石の衝突が引き起こした環境の激変が、当時の多くの生物種が絶滅した原因とされ、地質学や古生物学の分野では広く認められている仮説です。

白亜紀における自然環境と生物の進化

気候

白亜紀の始まりにおいて、大規模な絶滅は見られず、ジュラ紀から引き続き温暖で湿潤な気候が続きました。

一時的な寒冷化が起こる場面もありましたが、当時の表層海水温は現在より高く、低緯度地域では約32℃、中緯度地域では約26℃と推定されています。後期には、気候帯が形成されるとともに植物相にも変化が見られました。

植物の進化

この時代、原始的な裸子植物やシダ類は衰退し、被子植物が急速に進化して繁栄しました。針葉樹の中でもスギのような種は現在とほぼ同じ姿をとり、イチジクやモクレンといった植物も現代に近い形態に進化しました。

陸上動物

パンゲア大陸の分裂が進行し、地理的な隔離が生物多様性を高める要因となりました。

陸上では恐竜やワニなどの爬虫類が主要な地位を占め、多種多様な進化を遂げました。

前期にはジュラ紀に栄えた恐竜の多くが生存していましたが、後期には新しい系統の恐竜が登場し繁栄しました。

例えば、ティラノサウルスやトリケラトプスがその代表例です。翼竜については、大型種であるプテラノドンやケツァルコアトルスが後期に残った一方で、小型種は衰退しました。また、有鱗目の中ではヘビがトカゲ類から進化したのもこの時期とされています。

哺乳類はこの時代に進化を遂げ、胎生を獲得し、有袋類や有胎盤類への分化が始まりました。一部の哺乳類は恐竜の幼体を捕食していたとされ、化石の発見によりその証拠も確認されています。

鳥類は、真鳥類の出現により進化が進みました。陸上では孔子鳥やエナンティオルニス類が、海ではヘスペロルニスやイクチオルニスが繁栄しましたが、これらの多くは白亜紀末に絶滅しました。

海洋生物

白亜紀中期には南太平洋で大規模な海底火山活動が発生し、それに伴う海洋無酸素事変が確認されています。

この影響で魚竜や大型の首長竜が絶滅し、その後、モササウルス類やエラスモサウルス類が支配的な捕食者となりました。軟骨魚類ではエイやサメ、硬骨魚類ではニシン類が進化し、アンモナイトなどの軟体動物も繁栄しました。

また、ジュラ紀に登場した浮遊性有孔虫やナンノプランクトンが大きく分布を拡大し、その遺骸が石灰岩層を形成しました。これが「白亜紀」の名称の由来となっています。

白亜紀末期における地球規模の絶滅現象

白亜紀の終盤、約6600万年前に発生した大規模な生物絶滅(K-Pg絶滅)は、地球上に生息していた種の約75%を失わせた出来事です。

この絶滅によって、非鳥類型恐竜をはじめとする多くの生物が地球上から姿を消しました。この時期の絶滅は、中生代の終わりと新生代の幕開けを象徴するものとして知られています。

地質的証拠と小惑星衝突仮説

世界中の地層には、K-Pg境界と呼ばれる薄い粘土層が確認されており、その中にはイリジウムという珍しい元素が高濃度で含まれています。

このイリジウム濃度は小惑星物質の特徴と一致しており、これが絶滅の原因である可能性を裏付けています。

さらに、メキシコのユカタン半島に存在する巨大なクレーター(チクシュルーブ・クレーター)の発見は、直径10~15kmの小惑星が地球に衝突したという仮説を強化しました。この衝突が地球環境に甚大な影響を与えたと考えられています。

環境への影響

小惑星の衝突によって巻き上げられた大量の塵やガスは、大気中で太陽光を遮断し、地球全体を寒冷化させる「衝突の冬」を引き起こしました。光合成の停止や気候の急激な変化により、植物やプランクトンが壊滅的な影響を受け、それに依存していた食物連鎖全体が崩壊しました。

さらに、衝突で放出された硫酸塩エアロゾルが気候変動を長期化させたことも明らかになっています。

その他の要因

この時期には、火山活動や海面変動といった他の環境変化も絶滅に影響を与えた可能性があります。

インドのデカントラップに代表される大規模な火山噴火は、温室効果ガスの放出による気候変動を引き起こしたとされますが、小惑星衝突に比べてその影響は限定的であったとする研究もあります。

生態系の崩壊と進化の契機

絶滅の結果、地上や海洋における多くの生物群が姿を消しました。非鳥類型恐竜、首長竜、モササウルス、アンモナイトなどが絶滅する一方で、生き残った種はその後の進化の機会を得ました。

哺乳類は多様化を遂げ、馬や鯨、霊長類といった新たな種が誕生しました。また、鳥類も短期間で急激な適応放散を起こし、現代の多様性の基盤を築きました。

白亜紀末期における種ごとに異なる絶滅の特徴

約6600万年前に発生した地球規模の大量絶滅では、地球上の生物の約75%以上が姿を消したとされています。特に海洋生物の化石記録から、この絶滅の規模が明らかにされています。

地理的および生態的影響

この現象は全世界で同時に起こったと考えられており、恐竜の化石が白亜紀末の地層からは発見される一方で、それ以降の地層には全く見られません。

また、植生も大きな被害を受け、ニューメキシコ州やアラスカ、中国、ニュージーランドなどの地域で壊滅的な影響が確認されています。

分類群ごとの影響

絶滅の影響は分類群によって大きく異なりました。光合成に依存する生物は、太陽光が遮られることで衰退しました。

一方で、雑食性や腐肉食の動物は生き延びることができました。例えば、哺乳類や鳥類の中には、昆虫やデトリタス(分解物)を捕食して生き延びたものもあります。一方、草食性や肉食性に特化していた哺乳類は全て絶滅したと考えられています。

水生生物への影響

河川に生息する生物は、陸地から供給されるデトリタスを主な栄養源としていたため、絶滅の影響が比較的小さかったとされています。

海洋においても、深海に生息する生物はデトリタス(いわゆる「マリンスノー」)を利用していたため、絶滅の影響を受けにくかった一方で、植物プランクトンに依存する上層の生物は多くが絶滅しました。

特定の生物群の運命

植物プランクトンの一種である円石藻や、軟体動物であるアンモナイト、二枚貝の一部は、食物連鎖の崩壊によって絶滅しました。

例えば、モササウルスはアンモナイトを主食としていたため、それに依存していた食物連鎖が崩壊し、絶滅に至りました。

一方で、ワニ類やチャンプソサウルスのように半水生であり、デトリタスを利用できる生物は生き延びることができました。

特にワニ類は、腐肉食が可能で長期間の絶食にも耐えられる能力があり、さらに幼体の食性が多様であったことが生存の鍵となったと考えられます。

絶滅後の回復

この絶滅によって多くの生態的地位が空白となり、新しい生物がこれを埋める進化の機会を得ました。しかし、生物多様性が回復するまでには長い年月を要しました。

微生物の動向

白亜紀の石灰質堆積物は、多様な石灰性ナノプランクトンによって形成されましたが、K-Pg境界を境にその化石記録に大きな変化が見られました。

この変化は種レベルでも顕著であり、生物多様性の減少には種の絶滅数の急増が主な要因とされています。

渦鞭毛藻については、化石として残るのはシスト(休眠胞子)のみであるため、多様性の全体像が不明瞭です。

最近の研究では、K-Pg境界をまたぐ大きな分類群の変化は見られなかった可能性も示されています。放散虫は古くから化石記録が存在し、南極圏では暁新世初期に水温の低下に伴い大繁殖したことが確認されています。一方、珪藻類では約46%の種がK-Pg境界以降も生存しましたが、大きな生態的変化を経験しました。

浮遊性有孔虫の絶滅については1930年代から研究されており、K-Pg境界の天体衝突がこの絶滅に関連している可能性が議論されています。

一部の研究者は短期間の大量絶滅を主張する一方、他の研究者は長期的な絶滅と進化の繰り返しを主張しています。

底生有孔虫ではK-Pg境界における絶滅が確認されており、暁新世初期の植物プランクトンの回復が、餌資源の増加を通じてその多様化を促しました。

海洋無脊椎動物の影響

K-Pg境界での海洋無脊椎動物の絶滅率は、化石記録の偏りにより見かけの数字が変わります。

貝虫は新生代の初期に多様性が最低となったことが化石から判明していますが、大量絶滅の時期は明確ではありません。

サンゴでは、白亜紀後期の属の約60%が絶滅しました。

特に浅瀬に生息する造礁性サンゴは約98%が影響を受けましたが、深海の単体性サンゴはほぼ影響を受けませんでした。この差は、造礁性サンゴが光合成藻類との共生に依存していたためです。一方、頭足類の中ではオウムガイ亜綱が生き延び、繁殖戦略の違いが生存に寄与したと考えられます。

棘皮動物では、絶滅率が地域や環境により異なり、浅瀬に依存する種が特に影響を受けました。また、厚歯二枚貝やイノセラムスなどの大型二枚貝もK-Pg境界で姿を消しました。

魚類

顎口類の魚類(ヤツメウナギなどを除く)については、K-Pg境界前後の化石が存在し、絶滅の過程に関する重要な証拠が得られています。

深海の生物はあまり影響を受けていなかったと考えられていますが、外洋に生息する頂点捕食者や、硬い殻を食べるために大陸棚付近に住む底生魚類は、同程度の絶滅を経験したとされています。

軟骨魚類では、マーストリヒト期のサメとエイが分類される板鰓亜綱のうち、K-Pg境界を越えて生き残ったサメとエイの種類はそれぞれ、サメ25科、エイ9科でした。

属レベルでは、サメの85%が生き残る一方、エイは15%程度しか生き残りませんでした。種レベルでは、特にエイの多くは絶滅したとされています。

硬骨魚類の真骨魚類では、90%以上の科が生存しましたが、南極近くのシーモア島ではK-Pg境界直後の地層から化石が発見され、硬骨魚類の大量絶滅の証拠も残っています。

また、海洋や淡水の生息環境が、K-Pg境界で起きた急激な環境変化をある程度和らげたと考えられています。

陸生植物の絶滅と回復

K-Pg境界では、世界中の植物群に大きな変動が起こり、多くの植物が絶滅しました。この現象を示す証拠は、葉や花粉の化石を通じて確認されています。北ア

メリカでは、K-Pg境界前に繁栄していた多くの植物が、この境界付近で絶滅し、全植物種の57%が姿を消したとされています。

南半球の高緯度地域では、種の入れ替わりは大規模には発生しませんでしたが、短期的には植物相の変化が見られました。

暁新世における植物相の回復は、シダ類の急成長と共に始まったとされています。このようなシダ類の回復は、1980年のセント・ヘレンズ山の噴火後にも観察されています。

K-Pg境界直後には、光合成を必要としない菌類や腐生生物が繁栄しました。これらの生物は、植物遺骸から栄養を得ることで生き延びました。

菌類の繁栄は長く続かず、植物遺骸が減少し、大気の透明度が回復するまでの短期間の現象でした。

その後、太陽光が十分に届くようになると、光合成を行う植物が回復しました。最初の数世代では、シダ植物が支配的だったと考えられています。

また、被子植物が倍数性を持つことが絶滅を乗り越える要因となったとされています。倍数性は急激な環境変化への適応を助けると考えられています。

菌類の影響

K-Pg境界では、多くの菌類が絶滅しましたが、しばらくの間、一部の菌類は繁栄しました。

微化石からは、菌類の胞子が急増し、その後にシダ植物の胞子も増加したことが確認されています。

K-Pg境界やその直後の層からは、主に菌類の胞子や菌糸の化石が発見されています。これらの腐生生物は日光を必要とせず、大気中の塵や硫黄エアロゾルによる悪化した環境でも生き残ることができました。

菌類の繁栄は、他の大量絶滅時にも見られます。約2億5100万年前のP-T境界でも、地球史上最大の大量絶滅後に菌類の繁栄が観察されていることが分かっています。

両生類の生存

両生類については、K-Pg境界での絶滅証拠は限られています。モンタナ州の研究では、両生類で絶滅した種は確認されていないとされていますが、暁新世以降に見られなくなった種も存在しています。

カエルの一種や有尾目に似た種が絶滅したと考えられています。両生類が絶滅率が低かった理由は、淡水生動物全体が低い絶滅率を示したことと関係があるとされています。

哺乳類の変化

K-Pg境界を越えて生き残った哺乳類は、単孔類や多丘歯目など多様でしたが、種によっては大きな損失を受けました。

特に、後獣類は北米から完全に姿を消し、アジアでも多くの種が絶滅しました。ヨーロッパや北アメリカの後獣類は、暁新世に入ると回復しましたが、アジアでは回復は遅れました。後獣類が最も深刻な影響を受け、その後多丘歯目が続きました。

K-Pg境界を越えた哺乳類の多様化は約3000万年前に始まりましたが、恐竜の絶滅によって空いた生態的なニッチには、すぐには爆発的な多様化は見られませんでした。

翼手目や鯨偶蹄目はK-Pg境界後に多様化したとされてきましたが、最近の研究によると、有袋類だけが直後に多様化したとされています。

初期の哺乳類は小型で、穴掘りや半水棲の生活をしていたと考えられています。これにより、K-Pg境界の環境変化から生き延びることができたとされています。

まとめ

白亜紀(はくあき、Cretaceous Period)は、約1億4500万年前から6600万年前までの約7900万年間にわたる地質時代で、恐竜の最盛期と絶滅の時期が含まれています。この時代は、三畳紀とジュラ紀に続き、地球の大陸配置や気候が大きく変化した時期でもあります。

白亜紀初期には、パンゲア大陸が分裂し、北アメリカ、南アメリカ、アフリカ、ユーラシア大陸などが現在の位置に近い形に分かれました。

この大陸分裂によって海洋が拡大し、新たな海洋性の気候が生まれました。白亜紀中期には、温暖で湿潤な気候が広がり、多くの植物が繁栄しました。特に被子植物(花を咲かせる植物)が登場し、その多様化が進んだ時期でもあります。

恐竜は白亜紀を通じて支配的な陸上動物であり、ティラノサウルスやトリケラトプス、ヴェロキラプトルなど、著名な恐竜が活躍しました。また、海中ではモササウルスやイグアノドンなどの海生爬虫類が繁栄しました。

しかし、白亜紀末には大規模な絶滅イベントが発生し、恐竜をはじめとする多くの生物が絶滅しました。

これがK-Pg境界(白亜紀-古第三紀境界)であり、隕石衝突説や火山活動などがその原因として考えられています。この絶滅により、哺乳類の進化が加速し、次の時代の新しい生態系が構築されました。

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