徳島県では、古くから京阪神地方との交易が活発に行われていました。
江戸時代には、藍、塩、砂糖、紙、木材といった特産品が盛んに取引されており、藍商人たちは全国各地を行き来し、貨幣だけでなく文化も徳島にもたらしました。
当時、徳島の水田地帯では塩害や台風の影響で米の収穫が十分ではなく、藍の取引で得た収入で米を購入していたため、米を食べることの喜びは特別なものでした。
そば米雑炊の起源
「そば米雑炊」は、源平の合戦で敗れた平家の落人が身を潜めたとされる祖谷地方に由来します。
この地域では急斜面が多く稲作が困難だったため、粟や稗が主食でした。平家の人々は焼畑農法で栽培期間の短いそばを育て、それを雑炊や団子、そば切りに加工し、主食の代用としていました。
そば米とは、そばの実を塩茹でして殻を取り除き、乾燥させたものです。
落人たちが都を懐かしみ、正月料理としてそば米雑炊を作ったのが始まりとされています。
その後、野菜や山菜と一緒に煮込んだ日常食が一般的になり、山鳥を加えたものは特別なご馳走とされました。この料理は徳島県全域に広まり、やがて郷土料理として全国的に知られる存在となりました。
そば米汁
そば米汁は、そば米雑炊をアレンジした料理で、三好市の祖谷地方で生まれました。
そば米は野菜とともに煮込まれ、昔は主食としての役割を果たしていましたが、現在ではご飯のおかずとして楽しめる形になっています。
使用されるそば米は、徳島の祖谷地方で育てられたものが多く、その風味が評価されています。
材料と作り方
そば米汁の主な材料には、鶏肉や野菜(にんじん、だいこん、干ししいたけなど)、そば米が使われます。
調味料にはだし汁、薄口醤油、酒、塩を使用し、素材の旨味を引き立てます。
そば米は柔らかくなるまで茹でてから、他の具材と一緒に煮込みます。最後に三つ葉を加え、香りを添えることで完成します。
徳島の誇る味
そば米汁は、徳島の地元食材をふんだんに使った料理で、寒い季節にぴったりの温かい一品です。
その素朴な味わいと栄養価の高さから、地元の人々に親しまれ続けています。
まとめ
そば米雑炊は、徳島県三好市の祖谷地方を発祥とする伝統料理で、そばの実を主食代わりに活用した郷土料理です。この地域は険しい山々に囲まれた土地柄で、稲作が難しく、そばや雑穀が主要な作物とされていました。その中でそば米は、そばの実を塩茹でして殻を取り除き乾燥させたもので、保存性が高く扱いやすい食材でした。
そば米雑炊は、野菜や山菜、山鳥などと一緒に煮込み、風味豊かな出汁とともにいただく料理です。平家の落人がこの地域で焼畑農法を行い、短期間で収穫できるそばを育てて作ったのが始まりとされます。日常では野菜を中心に使った素朴な味わいが楽しまれ、特別な日は山鳥や豪華な具材を加えた「ご馳走」として提供されました。
現在では、そば米を使った雑炊や汁物は、徳島全域で親しまれ、徳島を代表する郷土料理として知られています。栄養価が高く、寒い季節に体を温めてくれる一品で、古き良き日本の食文化を感じさせる料理です。