四国山地が北にそびえ、南には太平洋が広がる高知県は、東西に長く、森林が県土の8割以上を占めています。
豊富な川ではアユやアメゴ、川エビ、ウナギ、カニなどがとれ、清流は黒潮が流れる海へ注いでいきます。
土佐湾は日本有数の漁場として知られ、回遊魚が季節ごとに訪れるほか、地元の魚も豊富で、イワシ類の産卵場にもなっています。
また、温暖で雨の多い気候により山菜や野菜の栽培にも恵まれています。この豊かな自然が、多彩な食材をもたらし、独自の食文化を育んできました。
高知県では、新鮮な食材を生かした料理が多く、酢を用いた調理法や、特にユズを使った風味が親しまれています。寿司や酢味噌料理も頻繁に作られます。また、「皿鉢料理」という豪快な宴席料理が伝わり、温かいもてなしの文化が根付いています。
かつおの角煮の由来
高知県では古くからカツオの一本釣り漁が盛んで、県を象徴する水産資源となっています。
カツオは身を刺身やタタキにして楽しむほか、アラを出汁に利用するなど、ほぼ無駄なく活用されてきました。
食べきれない刺身は保存性の高い「角煮」に加工し、炊きたてのご飯に混ぜる「カツオ飯」としても人気です。また、内臓を塩漬けにした珍味「酒盗」も名物として知られています。
カツオの角煮の材料とレシピ
材料(1人分)
カツオ(1.5cm角切り) – 60g
ショウガ(せん切り) – 2.5g
砂糖(三温糖) – 4.0g
清酒 – 4.0g
本みりん – 1.0g
濃口醤油 – 5.7g
作り方
1:カツオを三枚おろしにし、新鮮なものを使用する。
2:カツオを角切りにし、熱湯でさっと下茹でする。
3:鍋に調味料を入れて加熱し、カツオとショウガを加えて弱火で煮汁がなくなるまで煮込む。煮汁が少ない場合は出汁を少量加える。
カツオは高知県民に親しまれており、昭和63年には「県の魚」に指定されました。
郷土料理「皿鉢料理」では、カツオのタタキや刺身が豪快に並び、宴会文化に欠かせない存在です。余った刺身を角煮に加工し、保存食として活用するアイデアは、昔ながらの知恵が生きた料理といえるでしょう。
まとめ
カツオの角煮は、高知県の郷土料理の一つで、カツオを使った保存性の高いおかずです。
この料理は、食べきれなかった刺身などの切り身を再利用する工夫から生まれました。
新鮮なカツオを角切りにし、ショウガと一緒に砂糖、醤油、みりん、清酒などで甘辛く煮付けます。煮汁が少なくなって味がしっかり染み込むまで煮込むことで、濃厚な味わいが楽しめます。
カツオの角煮はそのままでも美味しいですが、炊きたてのご飯にほぐした角煮を混ぜて「カツオ飯」にしたり、卵焼きやおにぎりの具材としても活用されます。
また、栄養価が高く、特にタンパク質や鉄分が豊富なため、栄養バランスの面でも優れています。
カツオは「捨てるところがほとんどない」と言われるほど無駄なく利用できる魚です。
角煮のほかにも、出汁に使うアラや、塩辛として加工する内臓など、多彩な形で親しまれています。こうした工夫は、高知県の豊かな自然と食文化が育んだ知恵の結晶です。