新生代(英語: Cenozoic era)は、地質時代を3つに分けた際の一つで、約6500万年前から現在までの時代を指します。この期間は、古第三紀、新第三紀、第四紀という3つの紀にさらに分類されます。
恐竜が絶滅した後の時代として知られ、陸地では鳥類を除く恐竜が姿を消し、海中でもアンモナイトや海生爬虫類が絶滅しました。
その後、哺乳類が大きく繁栄し、地球の生態系が大きな転換期を迎えました。また、新第三紀と古第三紀をまとめて「第三紀」と呼ぶことがありますが、これは非公式な用語です。
地球環境の変化
中生代初期に超大陸パンゲアが分裂し、現在の大陸配置が形成されました。新生代が始まった頃、オーストラリアと南極は結合したまま南半球に位置しており、その他の大陸は海を隔てて分かれていました。
約4000万年前には、インド大陸がアジア大陸と衝突し、ヒマラヤ山脈やチベット高原の形成が始まりました。
その後、オーストラリアと南極、南アメリカと南極も分離し、南極大陸は完全に海に囲まれるようになりました。この地質変動に伴い、ヒマラヤ山脈では現在も浸食や岩石の風化が続いています。
気候と生物の進化
中生代の温暖な気候から、新生代に入ると徐々に寒冷化が進みました。特に古第三紀後期以降、南極大陸に氷床が発達し、地球は氷河時代へと移行しました。
動物の進化においては、恐竜絶滅後に哺乳類と鳥類が多様化しました。
植物では、白亜紀に出現した被子植物が広がり、地球全体に定着しました。
古第三紀初期には、哺乳類は小型でネズミ程度のものが多かったものの、その後地上の環境に適応し、体の大きさや種類が増加しました。この時代にはクジラやサル、ウマ、ゾウ、イノシシなどの現代の哺乳類に繋がる種も登場しました。
古第三紀の特徴
古第三紀(約6500万年前~2300万年前)は、暁新世、始新世、漸新世の3つの時期に分けられます。この時期は、徐々に寒冷化が進む中、南極大陸に氷床が形成され、氷河時代の始まりとなりました。
暁新世末には突発的な温暖化が起こり、海洋生物が大きな影響を受けました。この温暖化は、海底から大量のメタンガスが放出されたことが原因とされています。この現象は、現在の地球温暖化に関する議論にも関連する重要な事例とされています。
新第三紀の気候と生物
新第三紀は約2300万年前に始まり、現在のところその終わりは約258万8千年前とされています。
この時代は、地質学的には中新世と鮮新世という2つの時期に分けられます。古第三紀に隆起が始まったアルプス山脈やヒマラヤ山脈は、新第三紀を通じてさらに高山へと成長しました。
特に、雨が多く降るヒマラヤ山脈では強い浸食が進み、多量のカルシウム塩が海洋へと供給されました。このカルシウム塩が二酸化炭素を吸収する作用を持ち、大気中の二酸化炭素濃度は歴史的に見ても非常に低い水準にまで低下しました。
漸新世から続いていた南極の氷床形成は、新第三紀に入るとさらなる寒冷化をもたらし、約350万年前には北半球にも氷冠が形成されました。
哺乳類とその他の生物の進化
新第三紀の前半である中新世は、現在の哺乳類の多くが進化し、ほぼすべてのグループが出揃った時代です。
この時代には、種の多様性や個体数は現代を超えていたとも考えられています。海ではクジラの仲間からイルカが進化し、陸上では樹上生活をしていた霊長類の中から類人猿が現れました。
また、偶蹄類はイノシシ、シカ、ラクダ、ウシ、キリンといった種類に分化し、南アメリカやオーストラリアを除く地域に広がりました。
長鼻類のマストドンは、現在のゾウよりも広範囲に生息していました。一方、肉食動物のグループでは、イヌ、ネコ、イタチ、クマが登場し、さらに海生哺乳類であるアシカ、アザラシ、セイウチが現れました。
新第三紀後半の鮮新世には、これらの哺乳類の繁栄が続き、現在見られる動物の多くがこの時代に形を整えました。
約350万年前にはパナマ地峡が形成され、北アメリカと南アメリカが繋がりました。この地峡の形成によって南アメリカで繁栄していた有袋類は、北アメリカから渡ってきた哺乳類との競争に敗れ、ほとんど姿を消しました。ただし、オポッサムだけは例外的に生き残りました。
植物の進化
植物の進化においては、約700万年前に新しい光合成の仕組みを持つ植物が出現しました。
それまでの植物はカルビン回路を用いた光合成しか行っていませんでしたが、この時代に低濃度の二酸化炭素を効率的に利用できるC4型光合成を採用した植物が登場しました。これにより、トウモロコシやサトウキビのような新しい植物が進化し、環境への適応力を高めていきました。
第四紀の気候と生物
第四紀は約258万8千年前に始まり、現在に至るまで続いている地質時代です。
この期間は更新世と完新世の2つに分かれており、地球全体が「氷河時代」の状態にあるのが特徴です。
南極大陸の氷床はこの時代を通じて維持され、氷期と間氷期が交互に訪れる気候変動が繰り返されました。氷期には北アメリカやヨーロッパの広範囲が氷床に覆われ、間氷期には現在のような比較的温暖な環境が広がりました。
最も新しい氷期のピークは約1万8千年前で、当時の地球の平均気温は現在よりも6~7℃低かったとされています。
この周期的な気候変動は、地球の公転軌道や自転軸の変化、さらには歳差運動に関連しており、ミランコビッチ・サイクルとして知られています。これらの要因が、北緯55~65度付近の夏季の日射量の変化を引き起こし、氷期の始まりを促したと考えられています。
人類の進化と拡散
第四紀はまた、人類の発展と広がりの時代でもあります。人類は、アフリカの類人猿から進化したとされており、初期の直立二足歩行を示す種としてラミダス猿人が知られています。
約440万年前の地層からその化石が発見され、さらにその系統は約580万年前まで遡ることができるとされています。
ラミダス猿人の後にはアウストラロピテクス(アファール猿人)が出現し、約250万~350万年前の地層からその骨格や足跡が確認されています。
アウストラロピテクスは二足歩行を確立し、手を使って石器を製作する能力を獲得しました。その後、アファール猿人から派生した種の中で、硬い植物に適応した猿人は絶滅し、肉食により脳を発達させたホモ・ハビリスが生き残りました。
この系統はホモ・エレクトスへと進化し、さらに世界各地へと広がりました。
現生人類であるホモ・サピエンスは約20万年前にアフリカで誕生し、厳しい環境にも適応して生存域を広げました。
約10万年前にはアフリカを離れ、やがて中東、ヨーロッパ、アジア、オーストラリア、アメリカ大陸へと到達しました。これにより、地球上のほぼ全ての地域に人類が分布するようになりました。
生態系の変化と動物の減少
第四紀の間、大型動物の多くが絶滅しました。これには氷期から間氷期への気候変化による植生の変化が影響しており、人類による狩猟も一因と考えられています。
近代においても、ドードーやステラーカイギュウといった種が人類の活動によって短期間で絶滅しました。
また、哺乳類全体では新第三紀に比べて種や個体数が減少しました。たとえば、かつては世界中に広がっていた長鼻目の動物は、現在ではインドとアフリカにわずか2種が残るのみです。同様に、奇蹄類のサイやウマもその種数を大幅に減らしています。
まとめ
新生代(Cenozoic Era)は約6600万年前に始まり、現在に至る地質時代です。恐竜が絶滅した白亜紀末の大量絶滅を経て哺乳類と鳥類が進化し、地球の主要な生態系を占めるようになった時代です。この時代は古第三紀、新第三紀、第四紀の3つに大きく分けられます。
古第三紀(約6600万年前〜約2300万年前)
初期には恐竜に代わって哺乳類が多様化しました。また、暖かい気候のもとで被子植物が繁栄し、現在見られる植物群が形成されました。
新第三紀(約2300万年前〜約258万年前)
アルプス山脈やヒマラヤ山脈の隆起が進み、地球全体で気候が寒冷化しました。この時代には現代の哺乳類グループがほぼ出そろい、草原が広がることで草食動物の進化が進みました。
第四紀(約258万年前〜現在)
氷期と間氷期が繰り返される中で人類が進化しました。ホモ・サピエンスは約20万年前にアフリカで誕生し、地球全体に広がりました。第四紀は「人類の時代」とも呼ばれます。
新生代を通じて、地球の環境と生態系は現在の姿に近づき、多様な動植物が進化し繁栄しました。