熊本県は九州地方の中央付近に位置し、その約6割を森林が占めています。
西側は有明海や八代海に面し、東シナ海へと続いています。県内には、雄大な阿蘇山を中心とする「阿蘇くじゅう国立公園」や、大小さまざまな島々で構成される「雲仙天草国立公園」の二つの国立公園があり、山と海が織りなす美しい景観が広がっています。
郷土料理として特に有名なのは「馬刺し」と「からし蓮根」です。他にも、「太平燕」やさつまいもを使った「いきなり団子」など、地元ならではの魅力的な食べ物が豊富です。
つぼん汁は、人吉球磨地域で親しまれている郷土料理です。
この地域では、正月やお祭り、祝い事などの際に会席膳を用意する習慣があり、その中で特に深いお椀に盛られた汁物を「つぼの汁」と呼んでいたことから、その名がついたとされています。この料理は、地鶏や野菜、豆腐、こんにゃくなどを使い、家庭ごとに少しずつ味が異なるのが特徴です。
お祝いの料理として、具材の種類は奇数(7種類または9種類)にするのが一般的で、焼き豆腐や油揚げ、厚揚げのいずれかを必ず加えます。出汁は地鶏のほか、煮干しや焼きエビを使うこともあります。
つぼん汁のレシピと材料
材料
地鶏(1cm角) 20g
ごぼう(1cm角) 10g
さといも(1cm角) 20g
だいこん(1cm角) 15g
にんじん(1cm角) 8g
焼き豆腐(1cm角) 15g
こんにゃく(1cm角) 10g
乾しいたけ(1cm角) 1g
葉ねぎ(小口切り) 5g
乾しいたけの戻し汁+水 130g
うすくちしょうゆ 5g
清酒 1g
作り方
1:乾しいたけは洗って水で戻し、戻し汁を出汁として使用する。
2:鍋に水と戻し汁を入れ、地鶏と戻したしいたけを加えてひと煮立ちさせる。
3:他の具材を順に加え、火が通るまで煮る。
4:調味料を加え、最後に葉ねぎを入れて仕上げる。
人吉球磨地域では、秋祭りの時期に「おくんちさん」や「八幡さん」などの祭りが開催されます。その際には必ずつぼん汁が用意され、地域や家庭ごとに異なる味が楽しめます。
まとめ
つぼん汁は、熊本県の人吉球磨(ひとよしくま)地域に伝わる郷土料理で、主にお祝い事や祭りの際に振る舞われる伝統的な汁物です。
この料理名は、深いお椀を「つぼ」と呼んでいたことに由来し、「つぼの汁」が転じて「つぼん汁」と呼ばれるようになりました。
地鶏を使って丁寧にとった出汁をベースに、地元で採れた野菜や豆腐、こんにゃくなどを加えて作られます。
具材は必ず奇数種類(7種または9種)に揃え、焼き豆腐、油揚げ、厚揚げのいずれかを含むことが特徴です。また、家庭や地域ごとに材料や味付けが異なり、地鶏以外にも煮干しや焼きエビを使った出汁が用いられることもあります。
お祭りの時期や収穫の終わりを祝う秋祭りでは欠かせない料理で、地域住民の絆を深める役割も果たしています。その素朴ながらも滋味深い味わいは、昔ながらの家庭の味として今も受け継がれています。