誤謬とは?どういった意味なのか?

誤謬は「ごびゅう」と読みます。

論理学における誤謬(fallacy)とは、推論が誤っていることを指す。

簡単には「論理の飛躍」と言われることもある。誤謬は「形式的」または「非形式的」の両方がある。論理学やその関連分野では、結論の正当性に関わらず「誤謬」と呼ばれる。意図的な誤謬は「詭弁」と呼ばれる。

アリストテレスの時代から、非形式的な誤謬はその誤りの原因に応じていくつかの種類に分類されてきた。

「関連性の誤謬」、「推論の誤謬」、「曖昧さによる誤謬」などがある。

同様の分類は議論学でも見られる。議論学では、論証(論争)は個人間の合意形成のための対話プロトコルと見なされる。

このプロトコルには守るべきルールがあり、それらを破ると誤謬が発生する。以下に挙げる多くの誤謬は、このような文脈で理解される。

個々の論証における誤謬を見抜くことは難しい。

なぜなら、修辞技法によって論理的なつながりが曖昧になることが多いからだ。

誤謬は、対話者の感情や知性、心理的な弱さに訴えかける。論理的な誤謬について理解を深めることで、そのような状況に陥る可能性が減る。

誤謬は、相手の意見や信念を変えたり影響を与えたりするためのコミュニケーションの手段としてよく使われる(詭弁)。マスメディアでも、プロパガンダ、広告、政治的な発言、ニュース番組などで見ることができるが、それに限定されるものではない。

人間が誤謬に陥るのは、それが一見合理的であると感じられるからであり、ウソやデマであっても、それがウソやデマであると知っていて信じる人はいない。

形式的誤謬の事例

後件肯定

「PならばQである。Qである、よってPである」という推論形式。例えば、「魚ならひれがある。この生物にはひれがある、よって魚である」という推論は、クジラなどの存在によって誤謬になる。

前件否定

「PならばQである。Pでない、よってQでない」という推論形式。例えば、「人間ならば脊椎動物である。この生物は人間でない、よって脊椎動物でない」という推論は、犬や魚などの存在によって誤謬になる。

選言肯定

「AまたはBである。Aである、よってBではない」という推論形式。例えば、「ゴッホは天才または狂人である。ゴッホは天才である、よってゴッホは狂人ではない」という形式は、天才と狂人が同時に成り立ちうる可能性を無視している。

4個概念の誤謬

通常、三段論法には3つの語句があるが、4つ目の語句を導入することで誤謬になる。例えば、「魚にはひれがある。人間は脊椎動物である。魚は脊椎動物である、よって人間にはひれがある」という推論は、明らかな誤謬である。通常、二枚舌との組み合わせで巧妙になる。

媒概念不周延の誤謬

三段論法において媒概念が不十分である。「全てのZはBである。YはBである、よってYはZである」という場合、媒概念Bが不十分である。「すべての魚は脊椎動物である。人間は脊椎動物である。よって、人間は魚である」。

ギャンブラーの誤謬とは?

ギャンブラーの誤謬とは、ある事象が特定の期間で頻繁に発生した場合、その後の試行においてその事象が低確率で発生する(またはその逆、低頻度だった場合には高確率で発生する)と信じてしまう誤った考え方です。

実際には観察される結果がランダムであり、各試行が独立している確率過程である場合、このような考えは誤りです。

この誤謬はさまざまな状況で起こり得ますが、特にギャンブルに関連する事象でよく見られます。1913年にモンテカルロカジノで発生した現象の説明によく使われるため、「モンテカルロの誤謬」とも呼ばれます。

ギャンブラーの誤謬の由来

ギャンブラーの誤謬は、「小数の法則」への信念から生じ、小さなサンプルが大きな母集団を代表するという誤った信念につながります。

この誤謬によれば、母集団を代表するためには、結果が最終的に均等になる必要があると考えられます。

エイモス・トベルスキーとダニエル・カーネマンは、ギャンブラーの誤謬が「代表性ヒューリスティック」と呼ばれる心理学的バイアスによって生じると初めて提案しました。

このヒューリスティックは、特定の事象の確率を評価する際に、以前の経験に基づいて類似性を評価し、それらの事象の周囲の状況の類似性を評価するものです。

この観点から、ルーレットで赤が連続して出た後、多くの人が黒が次に出る可能性が高いと誤って信じてしまいます。

人々は、ランダムな試行の短期間の結果が長期的な結果と同様であると期待します。

カーネマンとトベルスキーは、これがランダムな事象の短い列が長い列を代表するという信念に起因すると解釈しました。

このヒューリスティックは、クラスター錯覚の説明にも使用されます。つまり、ランダムな事象の短い列が予想よりも頻繁に起こると、人々はそれをランダムでないと見なします。

また、ギャンブラーの誤謬は、個々のギャンブルが公正であり、出目の変動が自然に修正されるという誤った信念から生じる場合もあります。

他の研究者は、この誤謬への信念は、統制の誤った感覚から生じる可能性があると考えています。

自分のギャンブルの結果をスキルによるものと見なす人々は、偶然性が打ち克つ可能性を否定し、ギャンブラーの誤謬に影響されやすくなります。

まとめ

誤謬は、論理や推論において間違った結論や考え方に陥ることを指します。主に論理学や心理学の分野で研究され、さまざまな形式や原因が議論されています。以下に、誤謬の要点をまとめます。

定義: 誤謬は、誤った推論や思考パターンに基づく誤った結論を導く傾向を指します。推論が論理的に不正確であるか、事実や現実と矛盾する場合があります。

形式的誤謬と非形式的誤謬: 形式的誤謬は論理の形式そのものが間違っている場合であり、推論の形式が正しくないことによって生じます。一方、非形式的誤謬は、論理の形式は正しいが、推論が論理的に正しくない場合に生じます。

例: 形式的誤謬の例として、「後件肯定」や「前件否定」などがあります。非形式的誤謬の例としては、「ギャンブラーの誤謬」や「相関関係と因果関係の混同」などが挙げられます。

起源と原因: 誤謬の原因には、認知バイアスや心理的影響、統計的誤解などがあります。個々の誤謬は、人間の思考や判断の特定の傾向によって引き起こされることがあります。

影響: 誤謬は意思決定や推論プロセスに深刻な影響を与える可能性があります。特に、重要な意思決定や議論において、誤謬が考慮されない場合、誤った結論が導かれる可能性があります。

克服: 誤謬を克服するためには、論理的思考の訓練や統計的な素養の向上、客観的なデータや証拠の重視が重要です。また、他者との議論や批判的思考の促進も効果的な方法です。

誤謬は人間の思考に普遍的に見られる傾向であり、その理解と克服は重要です。批判的思考や論理的な推論能力を向上させることで、誤謬を最小限に抑え、より正確な判断を下すことが可能となります。

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