宮崎県は、「太陽と緑の国」として知られる温暖な気候を生かし、豊かな自然と黒潮の恵みを受けた多様な農林水産物を生み出す地域です。
特に畜産業が盛んで、「宮崎牛」や「ハマユウポーク」といったブランドが全国的に評価されています。また、豊富な海の幸や山の幸を活かした食文化も根付いています。
南部の都城市周辺では、「がね」や「ねったぼ」などのさつまいもを使った料理が多く、日南・串間地域では、「カツオ茶漬け」や「マグロのかぶと焼き」といった魚介類を豪快に調理した料理が特徴的です。
「飫肥天」など、歴史と土地柄を感じさせる郷土料理も広く親しまれています。
冷汁(ひやしる)は、宮崎県を代表する伝統料理のひとつです。
焼いた魚と味噌をすりつぶして出汁でのばし、豆腐やきゅうり、大葉などの具材を加え、麦ごはんにかけて食べる夏向けの一品です。暑い季節でもさっぱりと食べられ、スタミナ補給に適しています。
冷汁の起源は古く、僧侶が広めたとされるものの、多くの地域では廃れ、宮崎県のみがその伝統を保ち続けています。地域の風土に合った料理として、長い歴史を経て受け継がれてきたとされています。
冷汁の作り方と材料
材料(1人分)
アジ(焼きほぐす)15g
木綿豆腐 25g
きゅうり(輪切り)20g
大葉(千切り)1g
みょうが(千切り)3g
葉ねぎ(小口切り)3g
白ごま 8g
白味噌 14g
出汁用昆布 1g
水 100ml
作り方
1:麦ごはんを炊く(精白米50gと押麦25gを水113mlで炊く)。
2:白ごまをすり鉢ですりつぶし、白味噌を加えて混ぜる。
3:すり鉢を火にかけ、香ばしくなるまで軽く炙る。
4:焼いたアジをほぐして加え、出汁でのばす。
5:豆腐を手で崩し、薬味(きゅうり、大葉、みょうが、葉ねぎ)を加える。
6:熱々の麦ごはんに冷汁をかけていただく。
冷汁は宮崎だけでなく、埼玉県や山形県でも類似した料理が存在します。埼玉では「すったて」と呼ばれ、農作業の合間に手軽に食べられる栄養豊富な一品として親しまれてきました。
現在は減少傾向にあるものの、家庭料理として地域の暮らしに根付いています。
まとめ
冷汁(ひやしる)は、宮崎県を代表する夏の郷土料理で、暑い季節でも食欲をそそるさっぱりとした一品です。
その特徴は、焼いた魚と白味噌、すりごまを混ぜ合わせ、出汁でのばして冷やした汁に、豆腐やきゅうり、大葉、みょうがといった薬味を加えたものをご飯にかけていただくスタイルです。特に麦ごはんとの相性がよく、暑い日でも栄養補給がしやすい工夫がされています。
冷汁の歴史は古く、起源は鎌倉時代にまでさかのぼるとされています。
当時は僧侶によって全国に広まったと考えられますが、現在、冷汁の原形をとどめているのは宮崎県のみです。その理由として、地形的に交通が不便だったため、古い形が残りやすかったことが挙げられています。
この料理の魅力は、手軽さと栄養バランスの良さです。
魚のたんぱく質、味噌やごまのミネラル、薬味のビタミンが一度に摂取でき、暑さで食欲が低下しがちな時期に最適です。また、冷汁は各家庭ごとにアレンジされ、地域や家族ごとの個性が反映されている点も興味深い特徴です。
冷汁は、埼玉県や山形県にも似たような料理がありますが、それぞれに名前や味付けの特徴が異なります。
宮崎の冷汁はその土地の気候や風土に根ざし、現代に至るまで伝統の味が守られてきました。夏の暑さを和らげる知恵と工夫が詰まった冷汁は、宮崎の食文化を象徴する一皿です。