温暖な気候に恵まれた神奈川県は、西部に広がる箱根や丹沢の山々、そして相模湾に面する美しい景観が魅力の地域です。
農地面積は県全体の約9％と限られていますが、工夫を凝らし、大根やキャベツといった作物が全国的に高い生産量を誇ります。
また、海に面した地域では漁港が点在し、近海漁業や遠洋漁業が盛んです。地元で採れる新鮮な食材が豊富で、山海の幸に恵まれています。
けんちん汁の由来と特徴
けんちん汁は、もともと中国から伝わった卓袱料理（しっぽくりょうり）のひとつがルーツとされています。
「巻繊（けんちぇん）」とも書き、その名前は「巻く」「細かく切る」という調理法を示しています。
鎌倉時代に建長寺の開山である蘭渓道隆が修行僧のために考案した料理が始まりとされ、建長寺で作られた汁物から「建長寺汁」と呼ばれたものが、次第に「けんちん汁」となりました。
豆腐や根菜類を使用した精進料理で、栄養価が高く体が温まるため、家庭でも親しまれるようになりました。
調理のポイント
具材は豆腐やこんにゃく、大根、ごぼう、里芋など栄養たっぷりの野菜を使用。ごま油で炒め、だしとしょうゆで味付けをします。仕上げにもうひと絞りごま油を加えることで風味が引き立ちます。
栄養と健康へのメリット
けんちん汁には豊富な野菜が使われており、ビタミンやミネラル、食物繊維をしっかり摂取できます。これにより、体調を整えたり、腸内環境を改善したりと、健康維持に役立ちます。
エピソード
建長寺の修行中、小坊主が豆腐を誤って崩してしまった際に蘭渓道隆が発案したと伝えられる「建長寺汁」。その独創的なアイデアから生まれた一品は、時を超えて多くの人々に親しまれる郷土料理として残っています。
まとめ
けんちん汁は、神奈川県鎌倉市発祥の伝統的な郷土料理で、建長寺を起源とする精進料理の一つです。
もともとは中国から伝わった卓袱（しっぽく）料理の一種「巻繊（けんちぇん）」に由来するとされ、建長寺で修行僧たちが食べる料理として生まれました。「建長寺汁」がなまって「けんちん汁」と呼ばれるようになったと伝えられています。
この料理は豆腐、大根、人参、ごぼう、里芋、こんにゃくなどの多種類の野菜を使用し、ごま油で炒めた後、だし汁としょうゆで味を調えます。具材の食感や旨味を楽しむことができる一品で、精進料理として肉や魚を使わない点が特徴です。
けんちん汁は栄養価が非常に高く、特にビタミン、ミネラル、食物繊維を豊富に含むため、体調を整えたり腸内環境を改善したりする効果があります。
寒い季節には体を温める料理としても重宝され、家庭料理や給食のメニューとして広く親しまれています。
建長寺での修行中、小坊主が誤って崩した豆腐を蘭渓道隆が工夫して料理したことがきっかけとも言われ、このエピソードからも、けんちん汁の歴史的な背景と温かみのある魅力が感じられます。
